学びの真似び(まねび) 「学び続ける人」になるために(教育と受験と勉強法)

学習の仕方に困ったことはありませんか?ここでは、「真似び=学び」という形で、さまざまな学習方法へのアドバイスをしていきます。学習の仕方に悩んだら、受験勉強で行き詰まったら、ぜひ訪れてみてください。効果的な学習方法を知って、学び続ける人を目指しましょう!

成績をあげる第一歩!正しい学習方法は「記憶」の仕組みの把握から! 記憶の仕組み

ブログをはじめてわずかですが、少しずつ、読者の方もついてきて、はやくみなさんの求めているものを書きたいと思うのですが、となると、その大前提となる学習の仕組みを説明しなければ、ただの経験則になってしまいます。というわけで、まずは学習、そして「覚える」ということを考えてみます。

で、そのうち

  • 計画の立て方
  • 手帳の活用
  • ノートの取り方
  • 教科別の学習方法
  • 試験の振り返り
  • 苦手の克服
  • 大学受験に向けて

などなど、自分の仕事でつちかってきたものをここで紹介していければと思います。

ちなみに国語の教員なので、国語の学習方法(現代文・古文・漢文・小論文・作文・読書・漢字・文学史などなど)については、

manebikokugo.hatenadiary.com

ですすめておりますので、こちらもご覧ください。

というわけで今日は、「記憶」「覚える」ことの原理を説明します。これをもとに学習方法を組み立てれば、効果的、というわけですね。

 

陳述記憶と手続き記憶

いろいろな記憶があるようですが、まずは、この分類の話からいきましょう。

大きく分けると、「陳述記憶」と「手続き記憶」にわかれます。

「陳述記憶」

 これは「言葉を覚える」というようなことです。

たとえば、単語を覚える、文法を覚える、年号を覚える、公式を覚える、というようなもの。

つまり、いわゆる「暗記」に近いことですね。そのまま、覚えてしまうことです。

「手続き記憶」

こちらは「身につける」というようなことです。

英語でいえば、「聞ける・話せるようになる」。数学だったら、「問題が解ける」ようになる、というようなもの。

つまり、単に頭から言葉が出るのでなく、「体が覚えた」というような感覚に近いでしょうか。

いろいろなものを検証してみると…

 たとえば、水泳で考えてみましょう。

泳ぎ方の説明を受け、泳ぎ方のポイントや水泳のルールについて、試験があるとして、答えられるようになるのは、「陳述記憶」。

実際に、泳げるようになる、できるようになるというのが「手続き記憶」です。

英語だとするなら、単語を覚えたり、文法を覚えたりするのが陳述記憶。

実際に英語が話せるようになる、というのが手続き記憶。

数学なら、公式を覚えるのが、陳述記憶。

問題が解けるようになるのが、手続き記憶です。

教科別に考えてみると、どの科目も陳述記憶だけでなく、手続き記憶の要素も持っているはずです。でも、教科ごとに特性がありますよね。

社会、歴史や地理は陳述記憶型です。もちろん、今度の入試改革で思考力を問うとか、教科書を薄くする(やめたようですが)とか、手続き記憶型の問題も増えていくでしょうが、5教科の中では、暗記型科目ですよね。

真逆にあるのが、私の科目、現代文です。覚えることなんて漢字と文学史ぐらいで、あとは教科書に載っていればいるほど入試で出ないわけですから。

こう考えると、学校の現代文の授業で、試験対策として先生が書いた黒板やプリントを覚えて、再現するなんて、まったく意味がないことがわかります。

古典になると、覚えることが入り込んではきますが、だからといって、覚えればできるかというと、違いますね。試験では、初見が前提です。陳述記憶としてとらえるなら、入試で出る文章があらかじめ勉強してある状態がのぞましい。だから、覚えればすむ科目ではなさそうです。

数学もかなり、手続き記憶型です。公式を覚えていてもほとんど意味はなく、それを使えないと意味がないですから。そう考えてみると、数学は水泳と同様、身につけるまでには練習が必要な科目であることがわかります。

理科ですが、おそらく、小学校や中学校ぐらいまでは、陳述記憶でのりきれる部分が社会同様多い気がします。しかし、高校に入って、物理、化学を中心に、数学的なエッセンスが多く入ってきます。高校に入学して、これまでと同じように、陳述記憶中心で学習をすすめると、物理化学は苦戦する可能性が高いです。発想の転換が求められます。

最後に英語ですが、あきらかに中間型でしょう。単語や文法を中心に覚えればできる=覚えなければできない、こともたくさんありますが、リスニングやリーディング、そしてライティングなど、英語を使う局面には練習が必要です。まして、4技能なんてことになれば、どんどん手続き記憶型になるはずです。

英語の授業で、説明を聞いてノートに写すだけ。読みもしなければ使いもしないという授業ではどんどん苦しくなっていくことが想像できます。

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 まずは学習方法を振り返ろう

 このように振り分けるだけでも、自分の成績があがらない理由、お子さんの成績が伸び悩む理由が見えてきます。

基本的に

  1. わかったら、もうこれ以上やらなくていいと思う。わかるものをやるのは無駄だと思うタイプ
  2. わかっても、もう少しやってみたいと思う、言われたことをコツコツと取り組んでいくタイプ

ちがう分け方をすると

  1. 説明を受けないと自分で取り組めないタイプ
  2. 説明を受けなくてもどんどん取り組むタイプ

なんていう風にわけたとすると、

どちらかというと、上の方の1番が文系型で、2番が理系型になりやすいです。

おおきなポイントは数学で、数学はわかってもたくさん解くことで、解き方が身についていく、発想の仕方がみについていくわけです。この我慢がないと数学は苦手になりやすい。

「うちの子は上では2なのに数学、算数が苦手なんですけど…」というパターンもあります。それは、「言われてからしかやらないけど、同じ問題をひたすら覚えている=陳述記憶にしている」というケースです。つまり、下のタイプが1になってしまう。そうすると、「説明されないとやらないのに、説明したものだけしかしない」わけです。この場合は、やっていない問題に向かわせる必要が出てきます。

すごく簡単にいうと、生徒(お子さん)の性格が得意不得意を作っている、ということですね。

 

記憶の仕組み

 

次に特に陳述記憶を中心に、記憶の定着について書きます。

記憶は、「瞬時記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3段階を経て定着をします。

瞬時記憶

 瞬時記憶というのは、わけのわからない言葉を反復して覚える、というようなことです。あるいは、わけのわからない言語を見て写すというようなこと。

まったく意味のない、知らない図形や絵でも、少しずつであれば写せますよね?

これが瞬時記憶です。

たとえば、おかあさんが自分の部屋に財布をとりにいこうと思っていた時に、電話がかかってきて終わった後「あれ、私、何をしに来たんだっけ?」とか

家を出た後に「あれ、鍵しめたっけ?」ってなって、もどるとしまっている、というあれです。

脳は、この部分で、ひとつしか記憶しないで、上書きをしていくため、上書きされると忘れてしまうのです。決してぼけているわけではないんです。

短期記憶

これを何かあっても少しの間なら覚えておける場所に移動させて記憶が一歩すすみます。これはごくごく短い間だけ覚えておくような記憶です。

イメージでいうと、

小テスト前に、むりやり詰め込んであとで忘れてしまう、あの感じです。

瞬時記憶から短期記憶に移行させるためには、簡単で、1回でもとなえればいい。

これで、少なくともちょっとの間(個人差が出てきます)は忘れません。

ドアを閉めたら、一度つぶやく。「私はドアを閉めた」

自分の部屋に取りに行く前に、一度つぶやく。「私は財布をとりにいく」

などなど。これだけでおかあさんの「あらやだ。私ももう年かしら」というあの会話は減るはずです。

長期記憶 

では、それをさらにずっと忘れないようにするためには、もう一移行させる必要があります。

端的にいうと、最低2回の反復=復習が記憶の定着の条件、ということです。

しかし、2回で大丈夫か、と言われれば、なかなかそうはいかない。この2回というのは、あくまでも、瞬時記憶を短期記憶にし、短期記憶を長期記憶にするための2回であって、それぞれ1回で移行できるか、というのは個人差や記憶するものの難易度にもよるからです。

実際には5回ぐらいの反復で、長期記憶となる、と考えるべきもののようですね。

でも、すくなくとも最低2回(実際はおそらく5回)の復習が必要であることはわかります。

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学習への応用(陳述記憶系の定着)

上の図に示しましたが、この2回というのは、あくまでも、「忘れないうちに繰り返した」場合の話です。

たとえば、こどもがノートを取ります。もし頭の中にいれず、ひたすら写しているとするなら、それはすぐ忘れて0に戻ります。

たとえば、小テストや定期試験の時に時間がないから、テストまで覚えていればいいやり方でぎりぎりしのぐとすると、それは短期記憶なので、終わればまた0に戻ります。

かくして、受験勉強する時には、何もかも目新しい生徒のできあがり、となるわけです。

ここで、あと1回反復すればいいか、と言われてもそうはいきません。0になった以上、本当に0かどうかはともかく、また定着するまでやり直さなければいけません。

そもそも、覚えることは暗記ではありますが、試験で暗記した知識を使って答えること、になってくると、多少なりとも「手続き記憶」の要素が入ってくることになります。

だから、実際には、もっともっと時間がかかる。しかし、ふだん、それをその場だけの学習にして、常に0にする学習をしていることがわかります。

というわけで授業で学習をすることについてはすでに書きました。

manebi.hatenadiary.jp

ぜひ、ここでもう一度読んでみてください。その場その場で、頭の中に入れ、それから書く。頭の中に入れるためには、見ないで思い出す。

実はこれが記憶のもうひとつの大事な観点なのですが、これはまた別の機会にしましょう。

 

好きなものは一度で、嫌いなものはたくさん

この繰り返しの数には「印象」が関連しているといわれています。

好きなものは一度でいい。好きなアーティストの音楽、ふりつけ、鉄道、野球選手の成績、サッカーの試合結果と選手…

一回だけなのに覚えてしまいます。好きなものは反復の回数が少なくてすみますね。

一方、漢字を覚える、英単語を覚える‥ということは必ずしも好きになりません。そうすると、たくさんやらなければいけなくなります。

かくして、

「勉強は嫌いだよね。嫌いだから何度も何度もくりかえさないと身につかないよ」

となるわけです。

もう少しいうと、

「漢字はきらいだよね。だから、100回は書かないと身につかないよ」

となるわけです。

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好きなものは一度で、嫌いなものはたくさん???

しかし、私はいつも因果関係は逆なのではないかと思います。

何度も何度もやらせるから嫌いになる。嫌いになるからできなくなる。

ではないかと思うのです。

勉強の回数、時間は少なければ少ないほどいい。これを本気で考えていくと、一度しか勉強していないのにできる生徒になるんではないでしょうか?

経験則ですが、東大に現役で行くようなやつにかぎって、

「塾に行っていない」

「家庭学習をしていないといいはる」

「余計な趣味のような勉強ばかりしている」

なんてことが多いのです。

逆に、うちの学校のような中高一貫だと成績が悪いと補習が待っているわけですが、あんなに時間をかけて勉強しているのに、定着しない。

だからこそ「才能」「遺伝」「もともと」「地頭」になるわけですが、

うちの学校のデータでは入試の成績と出口の相関は非常に小さい。(これもあとで論じます。)

つまり、勉強時間を少なくすればするほど、成績があがるのではないか、ということも言えます。

これでは「まやかし」ですね。

もう少し理論的に進めましょう。

  • 意味のない課題はやらない
  • 宿題はできればない方がいい
  • そのかわり、自主的な取り組みはきちんとする
  • 授業でできるだけ終わらせる仕組みをつくる
  • ノートの取り方に工夫する

というような感じになっていきます。まだよくわからないですよね。これをこのブログでは具体的な方法と理論的な裏付けとして説明したいのです。ここまでは「授業と家庭学習」の項目でかんべんしてくださいね。

 

覚えることと思い出すこと

授業と家庭学習の項目でも書きましたが、記憶を定着させていくには、

「覚える」だけではだめです。

ちょっとやってみましょう。

次のものを全部買ってきてください。でも、メモは持っていけません。覚えてくださいね。あ、できればこの順番に買うっていうのはどうでしょうか。

ノート

チョコレート

醤油

筆箱

修正テープ

切手

りんご

アルミホイル

シャンプー

ケーキ

グローブ

マヨネーズ

鉛筆

洗濯ばさみ

はんぺん

ガム

せっけん

USBメモリ

わり

ポテチ

サッカーボール

紙袋

ビー玉

クリップ

のり

ミルキー

オレンジジュース

スカート

シャーペン

サランラップ

カレールー

ケチャップ

ガムテープ

 本気でやってくれましたか?

もしあなたが本気でやっていたら、最低限次のことをやっているはずです。

  1. ただ見て覚えるのでなく、声に出して確認している=覚える
  2. そして、ある程度唱えたら、目を切って(見ないで)、覚えたかどうかを確認している

いかがでしょうか?

もし、本気になったら、絶対に「思い出す」作業をしているはずなんですね。そして、

「言えた!」

と確認できてはじめて、覚えた、と思うわけです。

だとすると、授業でもこの二つはマストになるわけで、だまってノートを写すなんて、論外なんですね。

とはいえ、これをいったいどう処理するのか?これは次回の話とさせてください。